平成22年に国際交流基金文化事業の一環として、現ロシアサハリン州に『樺太時代の史跡保存事業に係る調査』として同行させて頂いた事は、私にとって筆舌に尽くしがたい出来事でした。
そこでまず驚いたのは、日本統治時代には其処かしこに瓦屋根の建物が存在していた事実でした。
当時の写真を見ると、とても平穏な日常を送る日本の人々が、瓦屋根の建物とともに映し出されていました。
中でも今もサハリン州立博物館として存在する、元々は樺太庁博物館を訪れた際、その屋根にS型瓦と呼ばれる洋風の瓦が葺かれている事に驚きました。
『えっ、この瓦この当時あったの???』
私を含め皆さんがイメージする昔の瓦は、お寺やお城に葺かれた純和風のものが大半のはずです。
しかしながら、添付写真の通りヨーロッパ基調の洋風の瓦が屋根に載っていたのです。
帰国後調べてみると、このS型瓦は樺太庁博物館が建立された前年に開発されたばかりの、当時としては最先端の瓦だったのですよ。
この瓦は今でもスペイン瓦として、洒落た建物に人気の高い瓦ですが、80年も前に、それも開発されたばかりの瓦を採用した政府担当部署の英断にもとても驚きました。
さらに専門的な話になりますが、この瓦の役物や納め方等等、色々な発見があり、それはもう楽しかったですね。
私にとって、多少なりともこの事業の趣旨に色を添えられた、とても誇らしく有意義な調査となりました。