瓦と私③

そうですね~、長いこと瓦に携わっているとちょっと変わった案件もありましたね。
稚内ではさる陶芸家が、長野県で購入した武家屋敷を移築しその屋根に瓦を葺きました。
だだっ広い草原の中の一軒家で長野から来ている大工さんや陶芸教室の生徒さん達と、近所の漁師のおいちゃんおばちゃんが持ってくる魚を肴に、毎晩キャンプファイヤーを囲んで宴会だったりしました。(私はほぼ下戸だからちょっと迷惑)
襟裳ではとても徳の高い住職が居られる寺の本堂に瓦を葺きました。
(この方は本物の霊感があるのです!)
ここの檀家さんは皆住職を慕っており仲良しで毎日身に余る食事をごちそうになったりしました。
あと何故か温泉には瓦がつき物であちらこちら、トムラウシ温泉の泉質に感嘆したり。
イギリスはコッツウォルズの家や石屋製菓のチョコレートファクトリーではハンドメイドのイギリス瓦を葺き、札幌市の瀋陽庭園には紫禁城と同じ中国瓦を葺いたり、スウェーデンやスペイン、フランスの瓦、大きなシャチホコの乘った小樽市博物館などなど・・・
そんな中でひと際印象深いのは博物館網走監獄の教誨堂に葺かれた瓦に携わることが出来た事でしょうか。
私はこの瓦を初めて見た時、独特の風貌や肌触り感など、今まで多様な産地の瓦を見てきた私が経験した事がないものでした。
その私の経験から、色々な角度からの考察により当時囚人が焼いた瓦である事をほぼ断定する事が出来たのは大きな収穫でした。
2016年この建物は国の重要文化財に指定されましたが、私が瓦の過疎の地、北海道で瓦職人をやってきた事が報われた出来事でもあったのです。
 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です