※ここでは誤解された認識と本当の真実についてお話します。
今の瓦と昔の瓦の違い。
現代の瓦は特殊な手作りの役物等を除いて、ほぼオートメーション化された日本工業規格に適合した製品です。
したがって微妙な曲線をもつ桟瓦も、合い口(瓦と瓦の合わせ目)が揃い、納まりが良くなっています。
また、棟に積む熨斗瓦(のしかわら)は、例外を除いて真っ直ぐであることが望ましいのですが、これもよい製品が出来ています。
これらのことは瓦屋根の美観を整えるだけではなく、実質的に雨風の侵入を防ぎ、屋根材としての能率を高めています。
明治・大正時代の瓦は、手作りと焼き温度による品質の一定化が難しかった事により、プロペラと呼ばれるほど捻じれているものがほとんどでした。
したがって屋根にならべた時、納まりが悪いのは言うまでもありません。
そこで先人達は瓦の下に床土を敷き、捻じれた瓦をガタつきのないように組み合わせました。
しかし現代の瓦は床土を必要としない、完全乾式工法によります。
その他、瓦自体も土配合や練り方、焼き温度に至るまで、今の瓦は皆さんが思っている以上に進化しています。
昔の土葺き工法(写真)
現代の乾式工法(写真)
昔の瓦の利点。
しかし、屋根に土を載せることは大変な労力と屋根に重量という負担を掛ける反面、二つの利点がありました。
一つは雨が瓦の下に侵入した場合、土が吸収し天候の良い時に気化してくれる事。
(これは形状の悪い昔の瓦にとって、願ったりの効果と言えます。)
そしてもう一つは抜群の断熱効果です。
今でこそ小屋裏などに断熱材を敷きこみ、高気密・高断熱施工が当たり前になっていますが、当時の建物では瓦屋根とトタン屋根では雲泥の差がありました。
もちろん瓦だけでも断熱効果は十分高いのですが、特に夏の猛暑が厳しい地方では、更なる効果がありました。
さらに外壁が土蔵や石造の建物になると防火としての機能も加わり、巨大な金庫、冷納庫といった用途で使われることもありました。
実際、小樽市の歴史的建造物の中には屋根に1尺(約33センチ)もの土が敷きこまれた建物もあり、そういった建物は四季を通して常に一定の温度が保たれていました。
今の瓦の利点と北海道での適合性。
建物の近代化と共に、より新しくより時代に即した工法が求められ瓦も進化しました。
やはり大きな違いは、冒頭にあげたように瓦の形状が良くなり、床土がなくとも納まるようになったことでしょう。
この事は工期の短縮と共に屋根の軽量化をもたらしました。
さらに瓦自体も軽くて凍害に強い製品が三州(愛知県)・石州(島根県)の各メーカーにより開発され、その品質は北海道立北方建築総合研究所により実証されています。
さて、当社はこれまで多くの歴史的建造物や近代の建物に瓦をのせてきましたが、ひとつ疑問に思うことがあります。
それは北海道の自然環境に瓦は適合しないという説が,何故か根付いてしまっていることです。
これは北海道で屋根の文化を守り、携わってきた者として、全く誤解された認識だと判ります。
最初のトップページの欄でも触れましたが、北海道で瓦が普及しなかった原因は他にあります。
それが何故か、雪の重みで瓦が割れるとか、瓦の重さに雪の重さが加わると建物が潰れるとか言った、あまりに稚拙で安易な発想がまかり通っているのです。
確かにトタン屋根に比べると瓦は数倍重いのですが、現代の建築基準法に則った屋根であれば、構造計算上ふつうに大雪が載っても全く問題はありません。
むしろ本州に比べ、地面凍結の観点から住宅の基礎が数段がっちりしている北海道の住宅の方が耐震の意味からも瓦屋根に適していると言えるかもしれません。
阪神淡路等の震災において、近年北海道にあるハウスメーカーによって建てられた住宅の倒壊は一軒もないと言う事実からも、そう言えるのではないでしょうか。
(本州では冬、凍土しないため住宅基礎が驚くほど脆弱に造られていることがあり、倒壊した多くはそうした古い基準の建物。)
それ以降、誰もその思い違いを検証・是正することなく、また探究する専門家が現れることもないまま現在に至っています。
もし、瓦がだめなものであれば、それは東京でも大阪でも福岡でも、何処でだってだめであると言うことです。
ただ自動車に北海道向けの寒冷地仕様車があるように、瓦にもその土地の環境に応じたそれぞれの仕様があって然るべきなのは、言うまでもありません。
当社はその技術を長年の経験と共に培ってまいりました。
願わくは、瓦の本当の価値を認識しお求めの皆様に、北海道で適切な施工を提供させて頂き、上記の間違った認識を一つ一つ払拭すべく、日本のすばらしい屋根文化を伝承できればと考えております。
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